働けど働けど…と思った日には「ポトスライムの舟」を読む

収入は増えたはずなのに、なぜか手持ちのお金が少ない。貯金が増えない。何故だろう?石川啄木ではないが、じっと手をみつめる。答えはそこにはない。給与明細を見た。税金が高すぎる。厚生年金が…と理由をつけることはいくらでもできたが、それ以外に支出が多いのだろう。夏にビジネススクールに通った。PRADAのバッグを衝動買いした。服や靴をまとめてカードで気前よく新調。某相談所にお金を支払った。月々の本代。仕事が忙しいからストレスがたまって、お金を使って気晴らしをする。稼いでいる意味を派手な消費で確認する。そんなパターンがいつしか出来ていたように思う。

ポトスライムの舟 (講談社文庫)

ポトスライムの舟 (講談社文庫)

そして。なぜだか私の脳裏には「ポトスライムの舟」という数年前の芥川賞受賞作の題名が浮かんできて、再度読まなきゃいけない気分になるのであった。読みやすいこともあって、前回は本屋でのとばし読みですませた記憶がある。それ故、ストーリーをまちがって覚えていたらしく、低賃金で働く主人公がようやく1年間で稼げるお金が世界一周旅行に匹敵する値段。生活を切り詰め、旅行に行くことを目指すが、途中病気になったりして、結局はあきらめる物語。だと誤解していた。その悲惨な仕事人生を主人公はどうやって切り抜けたんだっけ?今回文庫版を読み直してみたら、主人公には会社で仲良くしてくれる人がいたり、プライベートでの人間関係がひょんなことから充実してきたりして、途中から彼女達との交流のためにお金を使うことが意味のあることじゃないかと気付く。それで、おそらく旅行は後回しになるというのが本当のあらすじなのであった。仕事ばかりでプライベートでの人間関係が希薄になりがちな私は、また少し空しい気持ちになったという…。