バイオジプシーの運命

M&Aやリストラが激しいバイオサイエンスの機器・試薬メーカー(主に外資)を転々とする人間を称して、「バイオジプシー」という。学会併設展示会場の企業ブースでかつての同級生にばったり会うことがあるが、あれ?この間までA社にいたのに、今日はB社なのか、、、という光景をたまに目にする。
そして。私も間違いなくバイオジプシーだったのだ。1社目 医薬事業撤退で研究所の人間は邪魔者扱いされる→2社目 博士課程進学のため離職→3社目 所属部署ごと売り飛ばされそうになって転職→4社目 イマココ、てなものである。内資のメーカーに転職できたので、ここでジプシー歴をストップさせて落ち着こうと思っていた。いくら不満があろうとも、課長にまで昇進させていただいて、同様の待遇で他社が迎えてくれることはないと予想された。自分に子供とか守るべき対象がいたなら、忍耐できたのかもしれない。しかし、私は徹底的に一人であり、自分の感覚や考えがすべてである。興味や価値を認められない製品のプロダクトマネージャーとして、忙しいときには3時、4時起きで資料を作成し、他部署から文句を言われっぱなしのまとめ役とやらに疲弊した。この会社は基本的に体育会系なので、本人の意志、専門性に関係なく、無理やり空きポジションに人を押し込める。逆に我慢する能力さえあれば、会社には長くいられる。このような環境はどうみても事業運営には効率が悪いと思う。半導体産業が傾いたため余剰になった人材をライフサイエンス事業に大量異動させ、うまく立ち上がらないのは当然としか思えないのに、「なんで赤字続きなんだ!」とイラつく本社がアホなんじゃないかと。私はただ一言、「ライフサイエンスをなめんなよ。」と言いたい。
昨年から社内異動に向け、前社長へのアピール、新規テーマへの応募等、各種の策を弄してきたが、うまくいかなかった。先週、関係会社の伊那研究所(長野)であれば、異動させてもよいと言われ、つくばでもダメな私が適応できるわけないだろうと、前々から友人に推薦され、内定をいただいた神戸の某社に行くことを決心した。今度も新規事業立ち上げのため、いくらFCMのアプリケーション開発員として、大学との共同研究を推進すると言っても、いろいろな役をこなさなくてはならないだろう。それでも、慣れ親しんだ「本当の」バイオ業界に戻れることが嬉しいのだ。
進路に関して、親切にも話を聞いていただいたレクター博士、Mr.ソーン、千枝子さん、綾子さんには心からお礼を言いたい。ありがとうございました。必ずしも明るい未来とは言えないけれど、精一杯頑張ります。