自然界と人事

人口密度の低い田舎で育ち、友達と元気よく遊ぶ一方で、ひとり野原で花を見たり、虫を捕まえたりする幼少時代を送ったため、たまに文系や都会育ちの人と話した時に感じる、「人間関係=世界」という世界観にはなじめない。他人がいない大自然の中でも、自分は思考したり、何かを感じたりしながら確実に存在しているからだ。
「中二」という歳にはなにかあるのかもしれない。私はその頃、もっとも「人間嫌い」だった。中学受験からはじまったテストの成績を競う熾烈な競争。基本的に教師に協力的な私は目をかけられがちで、決してトップの点数ではないときでさえも、「今回、この海流の名前を正解したのは学年でClaudiaさんだけです!」と要らぬ発表をされては、一部のクラスメートの反感と嫉妬を買っていた。自分は好戦的なタイプではないので、過激で下品な人たちから嫌味を言われたり妨害を受けたまま、うまく反撃もできず、「将来は煩わしい人間関係を絶って無人島に住みたい。」と毎日アホなことを夢想していた。しかし、人を憎んで暮らしていてはあまりにむなしい学園生活になってしまう。何か打開策はないものか、とキョロキョロしていたら、自分に敵意を持たない人たちの存在に気付いた。そう、この人たちと仲良くすればいいのだ。それからはどこでも必ず自分の味方になってくれる人はいるものだ、と信じている。
しかしながら、「中二」の魂は百までつづく。やはり苦手なことは得意にはならないのである。自分としては現在の業務に一度たりともコミットしたつもりはないのであるが、事業部という部署で、事業を成功させるために、他部署間の業務の調整を行い、事業の進捗管理に付随するありとあらゆる雑務を担当している。人間関係に弱いからこそ、特殊な知識や技術で武装し、スペシャリストとして生きていこうと考えていたのに、全然活用されていないではないかー。博士を大量に雇用している企業は要注意だ。もちろん、製薬企業のように高度な基礎研究を行うために雇用する場合もあるだろうが、弊社の場合は結局、専門性に配慮しない人事配置が行われるため、博士だろうと修士だろうと関係ないのである。私は、3年間は忍耐しないと文句を言う権利もないだろうと思ったから、黙って責任を果たした…部下に適切な指示を与えないてけとー部長と仮面社畜の先輩に利用され、仕事を押しつけられまくってもね。しかし、そろそろ反撃に出るから、覚悟しときな。
残念なのは、この会社で苦労しているのは私だけではないということだ。研究員ともたまに話すのだけれど、彼らも異動希望には必ず、1番の「今すぐ異動したい」を選択しているらしい。うちの会社の規則では、そこに印をつけた社員を人事部はマークして追跡調査することにしているそうだ。そんなに皆が異動したいと思っているなら、普通に待っていてもなかなか自分の番は回ってきそうにない。私が事業部脱出のため、応募した新規製品テーマの採用結果発表をいよいよ来週に控え、期待に胸は高まる…!
経済活動は人間にしかできないから、生きていこうと思ったら人々の間にいるしかないんですけどね。